
八戸循環器医師が教える心臓リハビリへの栄養学
腎疾患とタンパク質
腎疾患の多くでは、尿素排泄障害となり、クレアチニン(Cr)、尿素窒素(BUN)が上昇する。
これまでは、タンパク質摂取制限することは窒素負荷を軽減し尿毒症への進展を防ぐことが理由とされていますが、本当にそうでしょうか。
腎臓で起きていることは、
・アミノ酸再吸収の破綻
・腎臓におけるアミノ酸変換の障害
・食事からのタンパク制限によりさらにインバランスの増悪
・必須アミノ酸濃度の低下
・とくにBCAAとチロシンの低下
このことによって身体ではタンパク異化(分解されること)が亢進します。
よって、腎臓が悪くなると筋肉がやせ細り(とくに下肢筋力)、疲労感や転倒につながります。
最近の慢性腎臓病に対する低タンパク食の見解はいかがでしょうか。
下記の論文で示されているように
Koya D, et al Diabetologia. 2009 Oct;52(10):2037-45.
【タンパク質制限によって腎機能の悪化を防ぐことはできなかった。】と結論づけております。
必要なのはアミノ酸です。
重要なアミノ酸;グルタミン
グルタミンは生体内遊離アミノ酸では最も多く存在します。精神安定にかかわるGABA(γ-アミノ酪酸)の前駆物質でもあります。
ストレスや病態時には、グルタミン需要が亢進します。急遽グルタミンが必要となった場合は、筋タンパクの異化が亢進し、グルタミンを産生します。
各種ストレスへの暴露
感染症、外傷、消耗性疾患(炎症性疾患、悪性腫瘍など)、ステロイド投与、激しい運動などでは血中グルタミン消費が亢進しております。すると筋肉グルタミンが血中へ移行するため、筋タンパクの異化亢進によりグルタミン産生となります。そのため骨格筋内グルタミンの減少により、筋量減少となります。
筋力トレーニングをしている方はご存じと思いますが、筋タンパク崩壊抑制にはBCAA;分子鎖アミノ酸が必要です。BCAAはバリン・ロイシン・イソロイシンを指します。BCAAは筋肉に取り込れ、代謝を受けてグルタミンを産生します。
また、グルタミンは肝臓に運ばれて、グルタミン酸となり、グルタチオンの元です。
グルタチオンは抗酸化作用を呈し、細胞の解毒(活性酸素除去)に作用しております。
ストレスで免疫機能低下となる原因としても、グルタミンが不足するため、腸管粘膜の機能破綻やリンパ球の機能低下により免疫機能破綻をもたらすと考えられます。
これから風邪をひきやすい時期となります。また、ストレスフルな方はぜひ、グルタミンを摂取して免疫機能を向上させましょう。

必要なアミノ酸
・グルタミン

・メチオニン
・グルタチオン
・BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン




